居住区の選択

実家でずっと暮らしていくものだと思っていた。

もう、5年以上前の思いだ。

 

俺は実家が好きだ。

懐かし思い出・・・虫取りした幼少期。友達と遊んだ小・中学生。部活に勉強、アルバイト。家に帰る時間も少なく突っ走った高校。研究に明け暮れた大学生。

どの思い出の傍らにも必ず、実家での暮らしがセットで記憶に残っている。郷里の記憶に同じく、懐かしく、微かに古びた思い出達。それを今後も作り続けていくものだと勝手にも想像していた。

家を出ることなど全く頭になく、もし出たとしてもいずれ戻ってくるのだろうと、なんとなくそう思っていたものだ。でも、状況は、かつてと違う。

 

環境が違う。今の居住区は、気候が違ったから。生活のしやすさ、人付き合い。諸々が違う。

家族がいる。養うべき家族が、いる。自身の想いだけで住む場所を変えられるわけではない。

仕事がある。それを捨てて、家に帰って、それでよかったと、納得できるはずがない。

 

何もかもが昔と違うのだ。全てを殴り捨てて、それでも実家に帰るべき選択をして幸せになる、できると言う自信は、俺にはない。

 

だから、今は忍耐の時と思っている。

郷里は時間を経るごとに変わっていく。いい面もある。でも、悪い面が多い。寂れ、人は年老いていくから。昔と同じものは、そう存在しない。

そんな時間の経過をじっくりと耐えて、腰を据えていずれ郷里へ帰れるときを想いながら、今を噛み締めて生活していきたい。

「ここに住みたい」と言うことは簡単だが、それを実行するのは本当に骨が折れる。自分と、周りの意見や状況をしっかりと俯瞰して、そしてどこに住むべきか選択するようにしたい。

 

後悔しないようにしたいから。納得したいから。そして、今の居住地を、好きになりたいから。